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2010年08月 アーカイブ

ゴッホの生と死 3

それにしても、生きるためには何かの仕事をしなければなりません。


ゴッホはイギリスにわたり、ロンドンの東、ドーバー海峡に面したヲムズゲイトにあるストーグス牧師の寄宿学校の住込み教師としてつとめることとなります。


彼は、そこで、10歳から14歳までの24人の寄宿生にフランス語やドイツ語や算術を教え、朝晩いっしょに聖書を読み、賛美歌をうたい、お祈りをしました。


6月に、学校は、ロンドン洒郊のアイルワースに移ります。


スドークス師は、「部屋と食事だけで充分教師を手に入れることができる」という理由で、ゴッホに月給を払おうとしませんが、「最近のぼくには、この世には教師と牧師・・・以外に職業はないように思われてきた」とテオに書き送るゴッホには、それでもなお、この仕事は、グーピル商会の店員よりは、はるかに満足すべきものだったでしょう。


「ロンドンのマーケット街から来ている21人の少年たちが


『天にましますわれらの神よ・・・今日われらに日々のパンを与えたまえ』


などと祈るのを聞いていると、ぼくは主が聞いておられるわたりがらすの雛たちの鳴き声を思い出すのだ。


そして、彼らといっしょに祈り、『われらを嘗試に遇わせず、悪より救い出したまえ』という言葉で彼らがやるよりももっと低く頭を垂れることはぼくには気持がよかった」


・・・という手紙のなかのことばからもそれを察することが出来ます。

ゴッホの生と死 4

しかし、ゴッホの方は満足していても、ストークス師としては、貧しい父兄からの月謝取立てに関してまったく無能なこの教師を雇っているわけにはいきません。


7月に、ゴッホは、同じアイルワースで、ジョーンズというメソジスト派の牧師がやっている学校に移り、そこでは、やがて、授業のほかに、一種の補助伝道師として、諸方に説教に出かけるようになります。


教師と牧師という、彼の理想だった2つの仕事を、まがりなりにもともに果しえたわけで、彼がこの仕事に全身全霊を打ちこんだのは当然でしょう。


彼がテオに書き送る手紙は、どれもこれも、神への熱狂的な賛美にあふれていて、その信仰の純一と徹底性のために、呼んでいてある危うさまで覚えるほどです。


ディケンズの小説で炭坑夫の悲惨な生活を知った彼は、炭坑の伝道師を志しさえします。


あいにく、25歳にならなければだめだということで彼の希望は叶えられませんでしたが、彼のこの希望は、人道主義的感傷といったものではまったくないのです。


生の最低地点にその身を重ねあわせたいという、彼の渇望の表れなのです。


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