ゴッホの生と死
ゴッホは、ロンドン生活の終わり頃、弟のテオにこんな手紙を送っています。
「人はただ幸福であらんがためにこの世にいるのではない。
単に正直にいるためにいるのではない。
彼は、社会のやめに大いなることを実現するために、崇高に達せんがために、大方の人々がそのなかで生きながらえている卑俗を乗り越えんがためにこの世にあるのだ」
というルナンの言葉を書き写しています。
彼は、失恋が生み出した心の空洞をこんな渇望でいっぱいにしていたのです。
パリからテオに出した手紙は、いずれも福音書からの引用がちりばめられていて、ほとんど狂信者のそれです。
しばらく前まで心を寄せていたミシュレやルナンまで捨て去られています。
「ぼくは自分の持っているミシュレの本などを全部破ろうとしている」とか、
「ぼくの忠告通り、ミシュレ、ルナンなどの本を清算したかね」とかいった言葉が見えます。