ゴッホの生と死 2
ゴッホはこの時期、いやいやながら店の仕事を済ませたあと、彼の夜は、聖書を読むことで過ごされるのです。
もちろん、いかに信仰に没頭していても、それが個人的な趣味に終わっていればどうということもないでしょう。
しかし、それが高じて、店に来る客たちにつっけんどんな対応をしたり、店の主人に「美術品の取引は、要するに、うまく仕組んだ窃盗の一種に過ぎない」と公言するにいたれば、これは話が別です。
75年の暮れ、店が忙しい真っ最中に、当時エッテンに移っていた家族のもとに無断で帰ったことがおそらく直接の理由でしょうが、パリへ戻った彼はクビを申し渡されます。
テオあての手紙によれば、事はこんなふうにして起ったのです。
「2人が会ってからまだ君に便りをしていない。
その間に、全く思いもかけなかったことがぼくの身に起きたのだ。
帰ってきて、ブッソ氏に会ったとき、ぼくは今年も店に勤めさせてもらえるかと尋ねた。
そして、自分としてはあなたがぼくにあまり重大な不満を持っていないことと思うと言った。
このあとの言葉が実際、問題になったのだ。
そして結局は、ぼくが彼らの店でいろいろと学んだことをこの紳士たちに感謝しながら、4月1日にこの店を辞めてもらいたいと彼は言うのだ」。
ゴッホの方は、まだこの店につとめ続けるつもりだったらしいのですが、この不可解な言動をする店員をいつまでも養っているほど世間は甘くはないでしょう。
このとき以後、彼は、通常の生活者としての道を決定的に外れ、地を這うようにして生きることを余儀なくされるのです。